最近注目を集めている
「低温調理」
料理人や料理評論家なども新たな調理法として注目してますよね。
特にお肉は、従来の高温で焼く調理法に比べ一味違います。低温調理したお肉は「やわらかい」「ジューシー」などと評判。
では何故、低温調理したお肉は「やわらかく」「ジューシー」になるのか?あなも気になりませんか?
その疑問に、お肉のプロがお答えします!
この記事では、
・低温調理とは、どんな調理法?メリットは?
・お肉が「やわらかく」「ジューシー」なる条件
・長時間の過熱が必要な理由とお肉をやわらかくする低温調理の加熱時間
・食中毒リスクを最小限にする正しい低温調理5つの注意点
の順番でご紹介します。
では、はじめます!
目次
低温調理とは、どんな調理法?
低温調理は、お肉の中心温度を60度~65度に保って食材を茹でる調理方法。
低温調理は、低い温度でゆっくり加熱します。低い温度で加熱するので、お肉の旨味の流失を最小限に抑え「やわらかさ」や「旨味」が増します。
そして、低温調理専用の低温調理器を使用することで「食中毒」のリスクを最小限に抑えることができます。
低温調理メリット
低温調理のメリットは、
・低温の湯煎でゆっくり食材を加熱することで旨味成分の流失を抑えおいしさがアップ
・低温調理器をつかうとほったらかしで調理できる
・重量が減らない
一つずつ解説します。
低温の湯煎でゆっくり食材を加熱することで旨味成分の流失を抑えおいしさがアップ
お肉の旨味成分は、タンパク質と水分。
高温でお肉を調理すると、繊維が壊れてしまいます。繊維が壊れることで旨味成分の元となるタンパク質や水分が「肉汁」として繊維の外に流れ出てしまいます。
旨味成分のタンパク質の一種「ミオシン」「アクチン」「コラーゲン」は、50度~65度を超えると変性し、繊維内に溶け出します。
低温調理は、60度~65度の低温でゆっくり調理します。低温で加熱することで繊維を壊さず旨味成分を中に閉じ込めることができます。旨味の流失を最小限に抑えることでおいしさがアップするというわけです。
低温調理器をつかうとほったらかしで調理できる
巷には、低温調理はに関して色々なレシピがネット上にアップされていますよね。でも、本来の低温調理からずれている物もあるので注意が必要です。
低温調理には、専用の調理器具を使うことをお勧めします。
それが、
「低温調理器」
低温調理につかう容器に固定して、温度と時間をセットするだけ。あとは、ほったらかしで勝手に調理してくれます。お値段は少々しますが、いろいろな用途に使えるので便利です!
重量が減らない
従来の「焼く」調理法では料理工程で旨味成分のタンパク質や水分が、お肉の外に流失していまいます。
低温調理は、肉汁などの流失を最小限におさえます。その分、お肉の重量を目減りすることがありません。
お肉が「やわらかく」「ジューシー」になる条件
お肉が硬くなる原因は2つ
①アクチンが収縮しきって水分を放出し硬くなる
※アクチンは66度を超えると水分を外に放出して硬くなる
②コラーゲンが溶け切っていないので硬い
では、どうすればいいのか?
お肉の「やわらかさ」には、お肉に含まれるタンパク質が関係しています。
お肉を柔らかく仕上げるためには、タンパク質の変性を利用します。
お肉には「ミオシン」「アクチン」「コラーゲン」などのタンパク質があります。
・ミオシン・・・ミオシンは棒状のタンパク質で50度で変性し始める。変性を始めると噛 み切りにくい生肉の食感から歯切れのいい食感になります。
・コラーゲン・・・56度で変性し始め、70度以上でゼラチン化する
・アクチン・・・66度で変性し始める。アクチンは水分を多く含むタンパク質。66度を超えると収縮し水分を外に排出します。水分が少なくなることで硬くなる性質。
低温調理でお肉がやわらかく仕上がるのは、アクチンの変性温度(66度を超えると収縮し水分を外に排出。水分が少なくなることで硬くなる)と深い関連があったんです。
長時間の過熱時間が必要な理由とお肉をやわらかくする低温調理の加熱時間
低温調理は、お肉の中心温度を60度~65度に保って長時間食材を茹でる調理方法。
従来の「焼く」調理法に比べ、料理時間が長くかかるのがデメリット。
でも、長時間かけるのには理由があります。
それは、お肉に付着している「寄生虫」や「細菌」を死滅させるためです。
お肉には食中毒をおこす「寄生虫」や「細菌」がいます。それを死滅させるための条件と加熱時間が必要なんです。
一覧表にまとめてみました。
寄生虫 | 食材の中心温度が60度以上で1分間以上の過熱が必要 |
O157 | 食材の中心温度が75度で1分間以上の過熱が必要 |
サルモネラ菌 | 食材の中心温度が75度で1分間以上の過熱が必要 |
病原性大腸菌 | 食材の中心温度が75度で1分間以上の過要熱が必要 |
腸炎ビブリオ菌 | 食材の中心温度が75度で1分間以上の過要熱が必要 |
ノロウイルス | 食材の中心温度が85度で1分間以上の過熱が必要 |
ボツリヌス菌 | 100度の過熱でも死滅しない |
食中毒をひきおこすその他の細菌は、食材の中心温度が「63度で30分以上の過熱が必要」といわれています。
食中毒リスクを最小限に抑えるためには、お肉の中心温度が重要なんです。
例えば、厚さ3cmのお肉は中心が推奨温度に到達するのに約100分かかります。
食中毒リスクを最小限にするためには、
・食材の中心温度を推奨温度まで上げる
・中心温度が推奨温度の到達した後に寄生虫や細菌を死滅させるために必要な時間を含める必要
なので、長時間の過熱が必要になんです。
食中毒リスクを最小限にする正しい低温調理の5つの注意点
低温調理で食中毒リスクを最小限にするためには、
①清潔な「まな板」「包丁」「お肉を入れるバッグ」を使うことが重要。そして、清潔な「手」で調理する。
②新鮮な食材を使い食材に菌などをつけないように注意する。
③低温調理加熱時間基準表の設定温度、時間をきっちり守る。
④正しい低温調理方法で加熱する。
⑤すぐに食べないときには、急冷する。
①清潔な「まな板」「包丁」「お肉を入れるバッグ」を使うことが重要。そして、清潔な「手」で調理する
清潔な「まな板」「包丁」「手の清潔」は低温調理に限らず料理に基本。
まな板や包丁は切る時に食材に直接触れるので、普段から清潔に保つことが大事です。
まな板も包丁も「生食用」「加熱用」「肉用」「魚用」など食材ごとに分けて使うのが理想。ですが、家庭で食材ごとに分けて使うのは面倒ですよね。包丁は使った後に洗剤などでしっかり洗い、除菌スプレーでしておくと清潔に保つことができます。
まな板を清潔に保つ方法
まな板を清潔に保つには、
・包丁と同じで、使った後は洗剤などでしっかり洗い、除菌スプレーでしておく
・使う前に水洗いし清潔な付近やペーパータオルで拭く。水で濡らすことでまな板の表面に 膜ができて、匂いやシミが付きにくくなります。木のまな板は片面だけ濡らすと反る原因になるので注意してください。
・洗う際は40度くらいの「ぬるま湯」で洗剤をつけたスポンジなどで洗う。いきなり熱めのお湯で洗うと、肉や魚などのタンパク質がかたまってしまい落ちにくくなるので注意してください。
・使い終わったまな板は、なるべく「風通しのいい場所」で保管。
②新鮮な食材を使い食材に菌などをつけないように注意する
お肉の調理でよく耳にするのが、「常温の戻してからつかう」です。
菌は、気温が8度~15度で増殖をはじめます。15度~30度でかなり増殖し、30度を超えると急増します。
常温まで放置した食材は、菌がかなり増殖し食中毒リスクが高まってしまいます。食中毒リスクを減らすには「今までの常識」を疑うことも必要です。
お肉などの食材を下処理するときは、調理用ビニール手袋を使うとより食中毒リスクを減らすことができます。
菌の多くは「人の手」を介して食材に付きます。食材を触った手で道具やお肉を入れるバッグ、低温調理器のスイッチを触るとどうなるか・・・おわかりですよね・・・菌があちこちについて食中毒リスクが爆上がりになります!
調理の際は「調理用ビニール手袋」の使用をおすすめします。
③低温調理加熱時間基準表の設定温度、時間をきっちり守る
「60度の湯煎で30分以上」加熱すると豚肉の中の菌が死滅する。ということを耳にすることがあります。
これは間違いです!
「寄生虫」や「菌」を死滅させるためには食材の「中心温度」が重要になります。
じつは、お肉の厚さが3cm位でも中心温度が推奨の設定温度まで到達するのに約100分位かかります。
そして、食中毒の「原因菌」を死滅させるには、
一覧表にまとめてみました。
寄生虫 | 食材の中心温度が60度以上で1分間以上の過熱が必要 |
O157 | 食材の中心温度が75度で1分間以上の過熱が必要 |
サルモネラ菌 | 食材の中心温度が75度で1分間以上の過熱が必要 |
病原性大腸菌 | 食材の中心温度が75度で1分間以上の過要熱が必要 |
腸炎ビブリオ菌 | 食材の中心温度が75度で1分間以上の過要熱が必要 |
ノロウイルス | 食材の中心温度が85度で1分間以上の過熱が必要 |
ボツリヌス菌 | 100度の過熱でも死滅しない |
食中毒をひきおこすその他の細菌は、食材の中心温度が「63度で30分以上の過熱が必要」といわれています。
食中毒リスクを最小限にするためには、お肉の中心温度が重要なんです。厚さ3cmのお肉でも、中心が推奨温度に到達するのに約100分。
寄生虫や細菌を死滅させるために必要な時間を含めると、プラス時間が必要になってきます。
なので、
「60度の湯煎で30分以上」を信用するのは危険です!
ちょっと、話がそれてしまいましたが、
お肉を低温調理する上で最も重要なポイントは、
・ねらいたい温度
・お肉の最も厚い部分を測る
・時間を早見表でチェック
豚肉を低温調理する際の基準は、
⇒低温調理加熱時間基準表
を参考にしてください。
④正しい低温調理方法で加熱する
低温調理は正しい加熱方法で行わないと、「出来上がりにムラ」ができてしまいます。そして、食中毒リスクも高くなってしまいます。以下のようなことは危険です。注意してください。
・×耐熱バッグではないものを使う
〇バッグが破損する危険があります。製品箱をよく読んで「耐冷温度の表記しかないない バッグは適していません。使用しない!
・×バッグに幾つもの食材を重ねて詰め込む
〇詰め込み過ぎると食材を均一に加熱すことができない。重ねて低温調理する場合は、そのバッグの食材の最も厚みのある部分での加熱時間が必要です。
例えば、「60度」の温度設定で重ねた食材の厚さが「8cm」で低温調理すると、安全レベルに達するまでに3時間35分かかります。同じ温度設定で食材を重ねない「2cm」の場合は、1時間25分で済みます。
食材を重ねて詰め込むことは「時間」もかかるし「食中毒」の危険も高まってしまいます。一つのバッグに食材を入れるときは、重ならないように入れてください。
・×食材の一部が湯煎から出ている
〇食材の一部が湯煎から出ていると出ている部分は、設定温度に加熱できません。トングや耐熱瓶などを使い食材全体が完全に沈むようにしてから調理してください。
⑤すぐに食べない場合は急冷する
調理後すぐに食べない場合は水をいれたボールなどに氷などをいれ急冷してください。この時、食材が浮いて氷水からでないようにトングなどを使い食材全体が完全に沈むようにするのが重要。
完全に冷えたらバッグの水分をふき取り、「冷蔵庫」か「冷凍庫」にいれて保存してください。保存できる目安は、
・冷蔵・・・約3日
・冷凍・・・約1ヶ月です。
低温調理で食中毒リスクを抑えお肉がやわらかくなる温度と加熱時間のまとめ
この記事では、
・低温調理とは、どんな調理法?メリットは?
・お肉が「やわらかく」「ジューシー」なる条件
・長時間の過熱が必要な理由とお肉をやわらかくする低温調理の加熱時間
・食中毒リスクを最小限にする正しい低温調理5つの注意点
をご紹介しました。
「目から鱗」の内容も少しはあったのではないでしょうか?
巷には、
「食材の大きさや厚みを考えず、とりあえず低温調理してみた!」
「見た目だけで火が通っているか、いないかを判断する」
「調理用温度計を刺して推奨温度になっていたから調理を終了」など
巷には何の根拠もない危険な常識があります。
中には、
「金串をお肉の中心に刺して熱かったらOK」
などの危険極まりない判断方法を信じている人も少なからずいます。
このような判断方法が危険ということ、もう、お解かりになりましたか?
低温調理は、お肉を「やわらかく」「ジューシー」に仕上げます。
しかし、正しい方法で調理しないと「食中毒リスク」が高くなります。
この記事が、「お肉の美味しさをアップ」させ「食中毒」の危険からあなたを守る手助けになれたら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。